小手森城〜二本松城 〜伊達政宗の足跡〜 (2013/4/6)

小手森城 〜大躍進の廃墟〜

アタシは伊達政宗のことがかなり好きです。ええ、好きな戦国大名ランキングの中でベスト5に入るくらい。なんにせ伊達政宗物語なんてのを書いているくらいですしねw
さてその伊達政宗のことを語るには、小手森城(おでもり城)のことは外せません。この小手森城の戦いは、東北の大名たちに伊達政宗ココにありを知らしめた鮮烈なデビュー戦だったのです。


その割にこのショボさ

そんな政宗ファン必見の小手森城ですが、今はこのとおり見るも無残な荒れようです。
・・・でもそれも無理もありません。何故ならこの小手森城、政宗は立て篭もっていた城兵プラス近隣農民女子供含むまで800人を撫で斬りの皆殺しにしてしまったのですから・・・


影も形もありゃしねえ

当時の東北地方の大名たちは、それぞれ血縁関係を結んでいたりなんだりで、ナァナァな馴れ合い気質だったのです。なので戦をしてもチョロっと簡単に和睦が成立するし、どーせ負けても適当に降伏しときゃあ命までは取られんだろってことで、東北の地には小競り合いな反乱や戦が絶えなかったのです。


なかなかどうしてな山城だ

そんなマターリ空間に風穴を開けたのが政宗です。

東北の地がなぜこうも戦に溢れているのかと言えば、それは徹底的にやらないからだ! 
相手を簡単に許さずに、キッチリ止めを刺しておけばもう歯向かって来ることはない! 
そんな自分の鬼っぷりを見せ付ければ、周りの者はビビって降伏して来るに決まっている! 

そんな強烈な意思の下に政宗は、小手森城を完膚無きまでの血祭りに挙げてしまったのでした。


確かにノンビリマターリ空間です

小手森城の戦いが終わってみると、政宗の狙いはピタリと当たりました。肝心かなめの城主・大内定綱は取り逃がしてしまったものの、定綱に従っていた近隣豪族は政宗に恐れをなして、次から次へと政宗に降って来たのです。
なおこの戦いがあったのは、政宗がまだ家督を譲り受けたばかりの18歳のころの話です。事実上のデビュー戦で、強固な意志を持ってココまでのことをやってのけた政宗、やはりタダ者ではありませんね。


なんでこんなに疲れ(ry

という訳でこの小手森城は、政宗を語るのに外すことは出来ないスポットなのです。とは言ったものの、その政宗自身が徹底殲滅してしまったために何も史跡が残っていないというのは皮肉な話ですね。


鎌田行進曲かよ

ってことでもはや跡形も無い荒城となってしまった小手森城ですが、↑2枚の写真のように、典型的な戦国の山城です。遺構どころか山道すらまともに残っていない荒れようでしたけど、なればこそ政宗の本気を感じることが出来ました。


静寂の本丸跡

本丸跡には古びた社がひっそり建っているだけです。城跡にこういうものを見つけても、普段は賽銭をあげるどころか、まともにお参りすることすらも珍しいアタシですが(爆)今日は政宗に代わって亡くなった城兵と近隣住民のために祈っておきました。


なんとものどかだなあ

小手森城の周りは何処を見渡してもこんな感じのマッタリ風景が続いています。なるほど確かに、こんな空気の田舎です。きっと政宗のような暴れん坊が来るまではのんびりナァナァ空間だったんだろうなということが、ヒシヒシと伝わってきましたね。


小手森城
福島県二本松市 東北道二本松インターから30分

さてその後の政宗についてなのですが・・・

800人の城兵領民を見殺しにした大内定綱はと言えば、自分はちゃっかり小手森城から15キロばかり離れた所にある二本松城へ逃げ込んでおりました。
定綱と姻戚関係にあったこの二本松城の城主・畠山義継も、定綱から話を聞いて政宗の快進撃に震え上がります。思案のあげく義継も政宗に降伏することにしたのですが、政宗から突き付けられた条件は、領地の大半を没収するとの過酷を極めたものでした。いやいやそれでは困ると義継は、隠居していた政宗の父・輝宗に仲介を頼もうと、輝宗の居城・宮森城を訪れたのですが・・・なんと!おおよしよしと話を聞いてくれて城門まで見送りに来てくれた輝宗に突如刀を向け、

「キサマのことを人質に取る!ワシの領地とキサマの命を交換条件として政宗に突きつけてやるわ!」

などとトンでもないことをのたわまったのです!


※追記 2016.7.16 その現場に行って来ました


そんな冗談のような知らせを受けた政宗が早速、宮森城に駆けつけてみると、正に義継に拉致られた輝宗が、刃を突きつけられながらジリジリと歩かされているところではありませんか!

「政宗!ワシのことは構わん!この卑怯者をブっ潰してやれ! ワシのせいでお前の天下取りが遠のくくらいなら死んだ方がマシよ! ワシはあの世でお前が天下人にのし上がって行く姿をしっかり見届けてやるからな! さあワシを殺してみせよ政宗!」

このようなアニメやマンガにありそうなシチュエーションがマジで出現してしまったのです。これがフィクションの世界なら、何故かうまいこと人質が助かってしまうものなのですが、現実はそう甘くはありませんでした・・・

「ち、父上・・・・・・」

「どうした政宗!お前の器はその程度か? これしきの決断が下せなくては天下などは到底取れんぞ。ワシをがっかりさせるな!」

「・・・・・・鉄砲隊、かまえーい! 目標は・・・伊達・・・輝宗!! 撃てー!!!」

こうして政宗は自ら父を殺すことになってしまったのです。
しかもこの輝宗は、政宗にとっては特別な存在でした。病気で片目を失って以来、母にうとんじられた政宗に代わり、弟の小次郎を跡継ぎに押す一派が台頭する伊達家中において、政宗の力量をしっかと見切って若いうちに家督を譲ってくれた愛すべき父親だったのです。
父の尊い犠牲のもとに畠山義継を討ち取り、その死体を一度バラバラにしたものを更にもう一回繋ぎ合わせて晒し者にしてみた政宗ですが、その怒りは到底収まるものではありませんでした。

「次なる標的は・・・畠山が居城・二本松城!!! 全軍続けーーー!!!!」


二本松城 〜戦国の面影を探して〜


父の初七日が済むや否や、早速二本松城へ出撃した政宗でしたが、ココで更なる大ピンチが訪れます。政宗の勢力拡大を嫌った佐竹、蘆名、その他東北大名の連合軍3万!が、二本松城への救援に押し寄せて来たのです! 対する政宗の軍勢はわずか5千・・・しかしこの劣勢にもメゲることなく、政宗は見事佐竹蘆名連合軍を撃退することに成功したのです! 

※追記 2014.4.12に人取橋古戦場跡を訪れて来ました。

これは政宗にとっては信長で言うところの桶狭間の戦いと言ったところでしょう。この「人取橋の戦い」によって政宗は、東北の覇者としての地位を固めることになったのでありました。もちろんその後、しっかり二本松城を攻め落としたことは言うまでもありません。


これは立派過ぎるだろ

政宗を語るにおいて、これまた外すことの出来ない二本松城ですが、現在もこのように立派な形で残っております。


バリバリ江戸時代の城だな

こんないかにもなカッコいい城を見せられるのは、アタシ的にはむしろガッカリなんですよね。アタシが見たいのは、政宗と畑山義継の孫が死力を尽くして戦ったであろう土塁と空堀に囲まれた戦国の城なのですから。


幕末に色々あったみたい

アタシは全く知らなかったのですが、この二本松城には丹羽長秀の子孫が入って二本松藩を起こしており、幕末には奥羽越列藩同盟の一員として激戦が繰り広げられたとのことです。解説看板によれば、二本松少年隊という白虎隊みたいな組織が結成され、活躍したそうです。


これはこれでカッコいい?

やっぱりそういうウンチクが分かれば城廻りも楽しくなりますね。最初は戦国っぽさが全然残っていないことにガッカリしたのですが、幕末の激戦に想いを馳せてみると、これはこれでイイかと思えるようになりました。


桜が綺麗だろうなあ

城跡公園にはよくあることですが、この二本松城にもたくさんの桜が植えられています。あと2週間もすれば見事な桜吹雪が舞い、多くの花見客を楽しませてくれるんだろうなということが容易に想像できました。

※追記 2015年4月17日に大輪の桜吹雪を浴びてきました☆


おおっこれは!

城門内の公園を奥へと入って行くと、見上げる丘にぶつかりました。外から見てもよく分からなかったのですが、二本松城は平山城だったんですね。


なかなかどうして高い!

おそらく城下の公園や城門は、戦国期には城スペースの外であって、この丘の部分だけが二本松城だったのではないかと思われます。この辺まで来ると、立派な石垣や綺麗な公園の整備された感が無くなって、戦国っぽさが感じられて来ました。やっぱ戦国の城跡はこうでなくっちゃね。城門や石垣を見たときよりも俄然テンションが上がりました。


石垣しかない本丸

いつもだったら、何も無い、だがそれがいいであって、石垣すら無い方が風情があるなと感じられるところですが、この二本松城の本丸跡はイイ感じです。


これは見事だ

アタシはこれまで色んな山城の本丸跡からふもとの景色を見てきましたが、このように石垣越しに城下町を見たのは初めてです。城下風景の「カッコ良さ」と言う点においては、この二本松城本丸石垣跡からの景色が一番なのではないかと思いますよ。


ふもとの茶屋で食べたおでんw

という訳で、戦国っぽさが今ひとつだったが為に、政宗への想いがあまり沸いてくることの無かった二本松城でしたが、普通に観光地城跡公園としてはかなりイイ感じなのではないかと思います。桜の時期になったらもう一度訪れてみたいものですね。
あ、そうそう、このおでん、出汁が利いててちょーウマかったですよ(^^)


二本松城
東北道二本松インターから5分


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