織田信長亡き後の戦国時代天下人決定戦、その事実上の決勝戦は、尾張三河国境付近において羽柴秀吉と徳川家康の間で行われた小牧・長久手の戦いでした。
圧倒的な兵力を誇る秀吉軍を相手に、数で劣る家康軍は序盤戦で奇襲攻撃をかけて局地的勝利を収めると、すぐさま小牧山城に引きこもってしました。
この戦、細かい経緯の説明は以前に書いた「天下人物語」を読んで頂けたらと思いますが、こと大義名分という点においては家康軍の方に分があったため、秀吉軍はすぐさま家康軍を力でねじ伏せて「勝てば官軍」とキメこみたいところだったのです。でも家康は秀吉のそんな目論見などとうに見通していたために持久戦に持ち込んで、大義は我らにありとアピールすることにしたのです。
そこで秀吉は家康のたてこもる小牧山城を大きく迂回して、本拠地の岡崎を急襲してやろうと、羽柴秀次、池田恒興、森長可らの精鋭部隊を送り込んだのでありました。


こんな平地で奇襲攻撃・・・？

結果から言いますとこの作戦は大失敗に終わってしまいます。
っていうか実際にこの長久手古戦場跡に来てみて思ったのですが、こんな尾張平野のド真ん中を進軍して行っても徳川方にバレるに決まっているだろ！　秀吉軍の動きを察知した家康軍はこの長久手の地で秀吉軍を待ちうけて逆に奇襲攻撃をかけて秀吉軍をフルボッコにしてやったのでありました。


それがこの長久手古戦場跡

岡崎急襲部隊の名目上の大将は秀吉の甥の羽柴秀次でしたが、実際の戦闘指揮官は池田恒興と森長可という二人の織田家の宿将でした。
池田恒興がどのような人物かについては天下人物語にも書いたところでありますが、思いっきり簡単に説明すれば信長の乳兄弟（信長の乳母の子供）にして織田家の一門衆筆頭のような存在です。そしてもう一人、森長可という人物は森蘭丸の兄にして通称・鬼武蔵と呼ばれた織田家随一の猛将です。
それがなんと！長久手の戦いにおいてこの秀吉軍最重要幹部の二人が討ち取られてしまったのです！


鬼武蔵ここに散る・・・

さてこの鬼武蔵という人物、世間一般での知名度はほとんどゼロと言ってもイイくらいなのですが、戦国ファンの間ではなかなかどうしてな人気と知名度を誇っております。本能寺の変の折りに信濃の国を脱出する際に人質千人を皆殺しにしただとか、関所で馬を下りるよう門番にお願いされたところ、馬を下りるのがイヤだから門番を刺し殺して関所を通過して行ったとか、そんなヤバいエピソードが満載で、一部では戦国ＤＱＮ四天王の一人に数えられているくらいなのですから(^^;


敵も味方も大喜び？

鬼武蔵が討ち死にを遂げたと聞いて、秀吉軍団の面々も大喜びしたなどという話も伝わっております。もっとも↑のエピソードにしても、どこまで本当なのかは怪しいところですが、それでも鬼武蔵は絶対敵には回したくない、味方にしてもやっぱり怖い、そんな危険人物であったことは間違いないでしょう。
そんな泣く子も黙る鬼武蔵が討ち取られた場所と言われている武蔵塚を訪れて、なぜか筆者には笑いがこみあげてしまいました。
「ここであの鬼武蔵が！・・・ぷぷぷｗｗｗ」
みたいな感じでしょうか・・・なぜそんな笑みがこぼれてしまったのかは自分でもよく分かりません(^^;
そんな無礼千万な行為を働いたら鬼武蔵の霊に、愛馬・百段で追い回されたあげくに愛槍・人間無骨でメッタ刺しにされそうなものですが、でもなぜか筆者はこうして笑い飛ばした方が鬼武蔵も喜んでくれるような気がしました。


一方の池田恒興も・・・

もう一人の別働隊長・池田恒興もこの長久手の戦いで討ち取られており、その地には勝入塚が立っております。
その勝入塚を訪れてときの筆者の感想はと言うと、
「ざまあｗｗｗ」
って感じでした(^^;
詳しくは天下人物語を読んで頂けたらと思いますが、欲に目が眩んで織田家を裏切った男の最後としてはそんなものでしょう。


改めて天下分け目の大決戦だったんだなあ・・・

ってことで訪れてみた長久手古戦場跡ですが、やっぱり実際にその地を訪れてみてこそ感じることってあるものですね。
もともと筆者のイメージしていた鬼武蔵＆池田恒興の討ち死にの地というのは、細い深い山奥の道をコッソリぬけようとしたところをバッサリやられたと思っておりました。ところが実際に訪れてみた長久手の地は、イオンモールが立つような平地の開けた場所だったんですから・・・
また、まさか武蔵塚を訪れた自分が思わずその石碑を見て笑ってしまうなんて夢にも思っておりませんでしたしね(^^;
数々の歴史上の人物終焉の地を巡ってきた筆者ですが、こうもしんみりとした気分にならなかったことは初めてです。もしかしたら鬼武蔵の亡霊が、自分と同じくお前もＤＱＮに傾いてみせよとのりうつったのかもしれませんね。


※この後は清州城に行って来ました。

長久手古戦場跡
愛知県長久手市　リニモ長久手古戦場駅から徒歩１分