十日町・津南方面探索記 (2010/6/9)

先般、仕事の関係で新潟県十日町市・津南町近辺をウロつく機会がありました。この十日町市、新潟県人じゃなければぜんぜんピンと来ることの無いマイナーな地方都市だと思いますが、何気に世界有数の豪雪地帯だったり、コシヒカリで有名な魚沼地方のすぐ隣だったりと、実のところ結構見所のある場所だったりします。実際、道中で手に入れた観光チラシや国道沿いにあるカンバンを見ていると、なかなかどうして面白そうな場所が沢山ありました。
でも残念ながらこの日のあくまで仕事で来ているだけだったんで、そんな楽しそうな十日町市近辺の観光スポットを、ただ指を咥えて通り過ぎるだけとなってしまいました。よしこうなったら、後日改めてじっくり遊びに来てやろうじゃないの!アタシが有給休暇を使って十日町市近辺を再び訪れたのは、そんな決意から3日後の今日のことでありましたw


本百名水・龍ヶ窪 〜ナルシストの泉〜

アタシは水には結構うるさいです。いつも森の水だよりをアマゾンで箱買いしていて、ふだん家にいるときはそれ以外の飲み物は全くと言ってイイほど飲みません。もっとも、水道の水を森の水だよりだと言って出されてもたぶん分からないような気もしますけどwそれでもアタシが大の水好き人間であることは間違いありません。
そんなアタシが十日町市観光マップを見ていてまず最初に目を引いたのがこの、「日本百名水・龍ヶ窪」でした。地図を見てみるとこの龍ヶ窪、けっこう人里離れた山の中にあるようで、近所の人たちが気軽に水汲みに行けるようなふいんきではありません。森道山道をかきわけ進んだ先にある自然な水場から湧き出る冷たい天然水!これは水好きの血が騒ぐってものでしょう。
ってことでこの龍ヶ窪、国道から細い森道山道をクネクネと進み、10分ほどで駐車場まで辿りついたのですが、その水場まではもう少し歩かなくてはならないようです。で、龍ヶ窪に通じるその道なんですが、なんと!両サイドがブナの木で埋め尽くされているではないですか。ブナ林と言えば貯水性その他もろもろの要素が重なって水を綺麗に浄化する美味しい水作り必須の林です。


涼しくて気持ちイイや

こんな涼やかなブナ林に湧き出ている水が美味しくないはずがありません。そのうえ水場につくころには程よい運動で適度に喉も渇いているだろうし、こりゃあ最高に美味しい水が飲めそうだと先を進んで行くと、サラサラと気持ちイイせせらぎの音が聞こえて来ました。


こりゃ美味しそうな水だ

さすがにこの水をそのまますくって飲むことは出来無そうですが、なんだか見ているだけで喉が潤されてくる綺麗なせせらぎです。きっとこの水はアタシが向かう龍ヶ窪の水汲み場から流れて来ている水なのでしょう。ああ、早くこの水が飲みたい!歩を早めて進んで行くと、このせせらぎの水源らしき場所にたどり着いたのですが…


な、なんだこの泉は!!!

地、地面に向かって木が生えてる!! あたしゃ幾多の絶景な水景色を見てきましたけれど、こんなに見事な水鏡を見たのは初めてです(><) ブナ林の落ち葉と土を通ってきた天然ろ過水と、自然林の息吹によって生まれた涼しく綺麗な空気が合わさって初めて出来る奇跡ですよこれは(><)


ウソみたいだろ・・・これ水面の写真なんだぜ

これを見てアタシは、水面に写った自分の姿に見ほれてしまってその場から一歩も動けずに、そのまま衰弱死してしまったという、ギリシア神話に登場するナルシスという少年の話を思い出してしまいました。ナルシスが己が姿を写しだした泉も、きっとこのような美しい場所だったのでしょう。
さて奇跡の水鏡を生み出した源泉はいかなるものか!? いやがおうにも関心が高まります。やがてもう1分ほど歩いた先にその源となる水が湧き出ている場所がありました。


まあこんなものなんですけどね

こうしてこの場所だけを見ればちょっとチャチい感じはしますけど、それでもこれは紛れも無くあの奇跡の水鏡を生み出した水そのものです。早速持ってきたペットボトルに汲んでみると、やはり天然水独特の冷たい感がヤバいくらいに気持ちイイです。美味しい水ってのは手で触ってみても美味しいものなのですよ。
さてさて目当ての水を無事GETしたところですが、せっかくだから美味しい景色の下でじっくり飲みたいです。ってことでその先に続く遊歩道を歩きながら、落ち着いて水を飲むのにイイ場所を探すことにします。


この場所でどうかな?

さっきの水鏡の場所とはかなりふいんきもアングルも違いますが、絶景のクリアブルーを目の前にしっかり腰を据えることも出来ます。よし、ココに決めたっと。


よっこらしょっと

水をサカナに水を飲む…水マニアなアタシにとってこんなに美味し幸せなことはありません。正直、水の味そのものはよく分かりませんでしたけど、でもでもそれでも、こんなに美味しい水を飲んだのは初めてだって、ハッキリそう思うことは出来ました。


龍ヶ窪 国道117号線と405号線の分岐点近辺


秋山郷〜清津峡 〜……〜

今回の出撃作戦において一番の目玉が秋山郷で、次点が清津峡でした。
秋山郷とは有名な「秘境」でして、とにかく「秘境」ってのがウリな観光地なんですよ。秘境ってんだからいったいどれだけ秘境なんだろうって思ってワクワクして行ってみたところ…へ?これだけ?たんに途中の国道がせまっ苦しいだけじゃん!って感じで面白くもなんとも無かったんで写真の一枚も撮らずに退却してしまいました(><)
…で、次点の清津峡なんだけど、こっちは十日町駅で手に入れた観光パンフや国道に出ている看板を見た感じでは、十日町市においては1,2を争うくらいのビッグスポットっぽかったので行ってみたところ、これまたごくごく普通の「峡」でして、写真を撮ろうと思うような場所には出会えませんでした(^^; 
でも唯一、清津峡の温泉旅館街で食べた山菜天ぷらそばだけは収穫でした。この清津峡あたへんの山道には、やたら「山菜を無断取らないでください!」の看板が立っていましたから、裏を返せばそれだけ美味しい山菜が沢山獲れるってことですよね。そんな清津峡で食べた自家製山菜の天ぷらそばだけは特筆ものでした。


わざわざこれだけ食べに来る価値はあります。


七ツ釜 〜主役は滝に非ず〜

次の目的地は、清津峡のすぐ裏側にある7つの滝が見物という七ツ釜です。
観光チラシを見た感じでは清津峡の方が観光地ランクが上っぽい感じです。実際、清津峡から七ツ釜に向かう道は細く狭く、清津峡に行く途中で見かけたようなデカい看板もありません。でもでもそれでも、過去のアタシの経験では、微妙にマイナーな観光地の方が面白かったって経験は結構あります。また、面白い場所ほど道中は細クネってるものだってのもアタシの経験則です。そういう訳でちょっと期待して向かってみた七ツ釜でしたが、やはりアタシの勘はズバリ正解でした☆


これが七ツ滝の一つ?

この七ツ釜、こうして滝だけを見ると、どうってことはありません。いくら七つあるとか言ってみても、この程度の滝なら何個あっても、わざわざ見に行くような滝ではないでしょう。…が、実はこの七ツ釜、見所なのは滝そのものでは無かったのですよ。


主役はこっちだ!

そうです、この七ツ釜の主役は滝に非ず、この断崖絶壁石壁だったのですよ。滝そのものはたいしたこと無いんですが、この滝から見上げる切り立った彫刻のような石壁は、見事な自然の芸術品でした。


上から見れば凄さ倍増

この自然が生み出した幾何学模様の素晴らしさは勿論ですが、この七ツ釜、山林遊歩道もなかなかどうして歩き甲斐がありました。イイ汗かいたその先で眺める大自然の芸術品。なぜこの七ツ釜が秋山郷や清津峡よりも観光地として格下なのか本当不思議ですよ。


心地よく疲れました


七ツ釜 国道117号線から国道284号線に入って20分くらい


美人林 〜美人と呼ばれるブナ〜

この美人林と呼ばれる林は美しいブナの木が沢山立っている自然林でして、そのブナの立ち姿があまりにも美しいので美人林と呼ばれるようになったそうです。
そもそもアタシは立ち姿の美しさうんぬんは関係無しに、ブナの原生林ってヤツは、それだけでもう偉大なる自然の恵みの財産だと思っております。なのでもちろん、この美人林と呼ばれるブナ林に行かない手はありません。そうして足を踏み入れたこの美人林ですが、なるほどこれは確かに美人林と呼ばれる訳ですよ。


美人の合間を縫って

白い幹を見せて立ち並ぶブナの立ち姿の美しいこと美しいこと。アタシ的には森ってモンは、もっと色々な木や草が生い茂ってワラワラしていた方が自然な感じで好きなんですが、この美人林の颯爽としたスッキリ感は悪く無いなって思いました。


本当にブナばっかりだ

また、この林は足を踏み入れてみると、下界よりも明らかに温度が2度くらい低いです。そんなタダでさえ清涼感いっぱいな林の中に、こんなところまであるってんだから凄いですよこの美人林は。


スマートクール!

ってことでこの美人林、ただひたすらブナの木が生えているだけの場所なんですが、いやむしろブナの木ばかりの林だからこその美人林なんでしょうね。
森とは色んな植物が生い茂っていなければ面白くない…正に美人としか言い様の無い美しいブナの木々たちは、そんなアタシ的な常識を見事に覆してくれました。


入り口にあったお茶屋さん


こりゃ食べたくなるわなあ


美人林 国道117号線から352号線に入って20分くらい


川口簗場 〜あえて鮎はたのまないw〜

かの有名な魚沼産コシヒカリを育む魚野川の中流域にあるのがこの川口簗場です。そんな名水の流れる川で獲れた魚は勿論絶品の美味しさであることは言うまでもないでしょう。


簗場なので本当川のほとりにあります

その川口簗場で一番のウリとなっている魚は鮎なのですが、鮎だったら何処でも食べられる魚ですし、それにかつて長良川で最高と言えそうな鮎をシーズン中に食べたこともあります。ってことで今回はあえて目玉商品の鮎をメインに頼むことはせず、ハヤの焼き魚を食べてみることにしました。
ハヤ…またの名をウグイと言うこの魚なのですが、淡水魚ファン以外にはあまり馴染みの無い名前かと思います。でもこのハヤって魚、ヘタすると淡水魚の中では日本で一番沢山生息してるんじゃないかと言うくらいポピュラーな淡水魚だったりするんです。…んがしかし、殆ど食用にされていることが無いということは、それって要するに大して美味しく無い魚なんじゃないかってことなんですよねきっと(^^; そんなワラワラいれどもあまり食べられることの無い魚・ハヤの焼き魚ってのがこの川口簗場にある以上、基本珍しいモノ食いが好きなアタシが食べないはずがありませんw

そんなこんなでこのハヤの焼き魚を注文してみたところ、店の人が簗まで網とバケツを持って出て行くのが見えました。おおっ、これはもしかして本当に本当の獲れたてを食べさせて貰えるのでは!? これは是非とも捕まえる瞬間を見に行かねばなるまい!と思って店の人のあとをついて行くことにします。


この橋の向こうに簗が


ココに魚が上がってくるんだな

でも残念ながら、この簗にタイミングよくピチピチと魚が跳ねて来たのを捕まえたって訳ではなく、ハヤは簗の中央にある二つの箱型生簀のうちの一つから出されて来ました。…と言ってもそれはそれでついさっきまでこの清流の中で泳いでたんですから何の問題も無いんですけどねw


これは綺麗だ☆

どうですこのハヤって魚? 大きいし綺麗で美味しそうでしょう? …でも裏を返せば、こんな焼き魚に手ごろな大きさであり、かつこんなに綺麗だってのに食用としてはあまり珍重されていないんですよハヤは。そう考えると微妙っちゃ微妙でしょう(^^; それでもこんな綺麗な川を泳いでいて尚且つ獲れたて新鮮ホヤホヤな魚なんだからマズいわけはない!とアタシは信じることにしました。


キターーー☆☆

さてさてさて、待つこと30分ばかりでやっと出てきたのがこれです。どうです焼き上がりだけを見るとなかなか美味しそうでしょう? でもやっぱりアタシは色んな意味でのムネムネ感でドキがいっぱいになってしまってなかなかハヤに手をつけることが出来ません。他に頼んだ稚鮎の天ぷらと鯉こくを食べて(これはウマかったぜ!)いよいよメインディッシュのハヤに手をつけてみたところ…

あれ?なんだ普通に美味しいぞ?
味としては絶品とは言わないけれど、ごくごくフツーに美味しい魚の部類に入る味でした。鮎やイワナと比べてもそれほど引けを取るものでもありません。ただ少し小骨が多くて食べにくいのが気になったくらいでしょうか。って言うか、この小骨のぶんだけ鮎やイワナに軍配が上がるのかなって感じでしたね。
ってことでハヤに対する結論なのですが、そんなバカみたいに美味しい魚って訳ではないけれど、このレベルの綺麗な川に住んでいて、尚且つ沢山獲れるんだったら食べないのは損だなあって感じですね。…まあとにかくだ、この川口簗場に来てハヤって魚を実際に食べてみてよかったなあとは思いました。


店の中はこんな感じ

ってことで川口簗場、ハヤの味を堪能したところで、次は本命の鮎、次点の鮭、他にも鯉やらウナギやらと、まだまだ食べてみなければならない魚が盛り沢山です。
サイドメニューと言っても差し支えないハヤの焼き魚がこれだけ美味しかったんだから、本命の鮎や鮭はもっと美味しいんだろうなあ☆


川口簗場 国道17号線


いやー終わってみたら、今日一日でずいぶん色んな場所を回ったものです。今回行った十日町近辺は正直、観光地の格としてはローカルレベルのところばかりでしたけど、そんな二線級ならではのこじんまりした面白さをたっぷり味わえて、とても楽しい旅でした☆
それにしても、旅をしていていつもいつも思うことですが、ただ自分が知らないだけで、面白い場所ってのはいっぱいあるものですねえ☆


戻る

inserted by FC2 system