埋木舎〜彦根城 〜チャカポンの鬱憤と爆発〜 (2018.9.15)

井伊直弼・・・幕末の嵐の中、幕府と言う名の泥船の舵を握りしめながら非業の死を遂げたこの人物の評価はなかなか難しいものがあります。
井伊直弼は幕末の嵐の中で2つの大きな大問題に直面しました。1つはアメリカとの間で通商条約を結んで開国するか否か? もう一つは病弱な将軍・徳川家定の次の将軍を誰にするかというものです。
日本という国の行く末を決めると言っても過言ではないこの2つの難問に対しどう当たるべきか? 井伊直弼の前々任者である阿部正弘は外様大名にも広く意見を募ることでむしろ局面を混迷させてしまいました。また、前任者の堀田正睦は朝廷の許可を得ることにより場を解決しようとして逆に朝廷の介入を招いてしまい、事態はより収集のつかないものになってしまったのです。


井伊37万石の彦根城

この2人の前任者の轍を踏まないためにはどうすべきか? 江戸幕府の最高職・大老に就任した井伊直弼が選んだ道は自らが"赤鬼"となることだったのです。直弼は開国絶対反対な朝廷などガン無視してアメリカとの間で日米修好通商条約を結び、将軍継嗣問題についてはこれまた反対派のことを無理矢理に抑え込んで自らが押す徳川家茂を強引に次の将軍に擁立したのでありました。
また、直弼はこの二つの問題に関して自分の反対派を片っ端から捕えて死刑にしてしまうという「安政の大獄」を引き起こし、その結果、「桜田門外の変」にて白昼堂々と暗殺されてしまったのでありました。

さてこうして見ると、この井伊直弼という人物はコチコチの頭でっかちな強面エリート野郎のような印象を受けてしまうところでありますが、その半生は赤鬼などとは到底間逆なものでした。江戸幕府譜代大名筆頭・井伊家の14男として生まれた直弼は、もともと間違っても井伊家の家督を継ぐことなど出来る立場ではありませんでした。井伊家居城・彦根城の門外に居をかまえた直弼は茶道や短歌などといった趣味に没頭し、チャカポン殿(茶・歌・ポンは鼓の叩く音)などと呼ばれていたのです。


彦根城正門の向こう側には・・・

ってことで今回訪れたのがこの部屋住みチャカポンの直弼が鬱憤した半生を送った埋木舎です。直弼自らが名付けたこの埋木舎は、兄が城藩主を務めて藩士たちが藩政を担うために登城する彦根城の堀の外側にして正門の見えるところにあるのです。


この屋敷で埋もれるのか・・・

直弼自身は向上心の高い人で、埋木舎の中でも決して朽ちることなく、チャカポンのみならず学問にも精を出し、高名な学者たちとも親交を深めていたのです。
そんな直弼が毎日この埋木舎から登城する裃姿の藩士たちのことを、いったいどのように見ていたことでしょう?


今に見ていろよ

さてそんな直弼が色々な運と縁が重なって第十四代彦根藩主となり、更に幕政ナンバー1の大老の座についたのです。それまで黒船と将軍継嗣問題でアタフタしていた連中のことをどのような眼で見て、自分はどのようにふるまうべきと思ったのか? 想像するまでも無いでしょう。


井伊の赤鬼と化したチャカポン

直弼は今まで穀潰しのチャカポン扱いしてきた連中を見返してやろうと赤鬼となり果ててしまったのでした。
そうして苛烈とも言えるリーダーシップで日本を開国へと導き、また一方で過激すぎる粛清の嵐で優秀な人材を葬り去ってしまった井伊直弼・・・その原点はこの埋木舎にあったのではないかと思います。

さて前述のとおり、この埋木舎は彦根城の真ん前にあります。
前々から書いているとおり、アタシは戦国の世が終わってからの城にはあまり興味が無いので、この彦根城も今まで来る機会はあったものの探索はしておりませんでした。
ですがさすがにここまで来たら城の中をちょっと覗いてみようという気にもなります。
ってことで以下、彦根城の写真を貼らせて頂きますね。


ひこにゃんがお出迎えw


さすがにカッコいい国宝天守閣


天主から見た琵琶湖

・・・ってこれだけです(爆)
この彦根城は井伊直政が築いたという訳ではなく、しかも築城されたのが国宝天主を含めて大坂の陣のあとのことなので、本当に文章にして書きたいことが無いのですよ(^^;
でもあえて何か書くとしたら、彦根の皆さんがこの城をどれだけ大事にしていかってことでしょうか?
最初にこの彦根城に入ろうとしたとき、なんと!天主の中どころか城門の内側に入ろうとしただけで800円の入場料を取られてたけえ!って思ったのですよ。同じく国宝天主も松本城は天主のすぐ前まで1円も払わずに行けるというのにこの差はなんなんだと。
でも城の中に入ってその理由がすぐさま分かりました。大勢の人たちが一生懸命場内を掃き清めてきれいに掃除しているのですよ。天守閣の内部にもたくさんの掃除人さんがおりました。
アタシは今までに色んな城を訪れておりますが、ここまで手入れが行き届いている城は無かったと思います。これまた前々から書いているとおり、アタシは地元の人たちが史跡を大事にしょう盛り上げて行こうという姿勢には非常な好感共感を覚えますので、これなら800円の入場料を払うくらいは安いものだと思いました。


彦根城・埋木舎
滋賀県彦根市

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